低血糖症 資料

柏崎良子著 [栄養医学の手引]より抜粋

46章 低血糖症の体質と原因

低血糖症の体質

低血糖症は上記に述べた後天的な要素に先天的な要素がプラスして起こりやすいのです。例えば、同じ食生活をしている人を比べてみた場合、家族に糖尿病のひとがいる場合のほうが、インスリン過剰による低血糖症は起こりやすいのです。次のような体質に低血糖症は起こりやすいと言えます。

1. 下垂症、胃酸過多症
胃下垂症の人は摂取した食物を消化吸収する力が弱いため、鉄欠乏性貧血や栄養不良に陥りやすい。胃酸が多いと、胃からのカルシウムの吸収が低下し、ストレスに対してうまく対応ができません。

2.貧血体質
貧血がありますと、腸粘膜細胞が酸素不足となり、粘膜の再生能力、しいては食物の消化吸収にも悪影響を及ぼします。

酸素は、ブドウ糖がクレブス回路に入り、完全燃焼するために不可欠です。酸素不足は、エネルギー産生に支障をきたし、疲れやすい、集中力がないなどの症状をもたらします。酸素は含鉄酵素の材料として、代謝を促す働きも担っています。

脳神経細胞が神経伝達物質を遊離するときに酸素の働きが必要です。貧血は、脳神経細胞が順調に機能するために支障をきたし、呼吸が浅い、イライラ、集中力がない、などの症状となって現れます。

3.先天的糖尿病体質、先天的膵臓の機能障害
インスリンレセプターの異常やインスリン抗体の存在、GTFの低下により、インスリン分泌過剰症になりやすく、そのため膵臓が疲れやすくなります。

4.アレルギー体質
副腎は喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、慢性関節リウマチなどのアレルギー症状を抑える為に、抗炎症作用を発揮します。同時に副腎は血糖上昇作用を行う為、アレルギーに対し、副腎が活動していますと、血糖調節に十分力が発揮出来なくなります。その為、低血糖症の症状が現れやすいのです。その逆も言えます。低血糖症が重くなりますと、関節炎などの炎症症状が強くあらわれる事があります。インスリンは成分として亜鉛を含む為、インスリンが過剰に分泌されますと、亜鉛不足に陥りやすく、鼻炎や皮膚炎の症状を助長しやすくなります。

5.自律神経失調症
自律神経は、胃液の分泌、胃腸の喘動運動、インスリンや副腎髄質ホルモンなどの分泌など、様々な身体の働きに関与しています。貧血は、自律神経の働きを低下させます。副腎髄質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ド-パミン)は、下垂体から分泌されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)にも多少影響されますが、主に視床下部より刺激を受けた内臓神経(交感神経)が副腎髄質を刺激して分泌されます。こうした低血糖という緊急時に視床下部は積極的に対応していますが、自律神経失調症では、アドレナリンやノルアドレナリンの分泌がスムーズにゆかなくなることがあります。インスリンは副交感神経によって分泌を促進されますので、副交感神経が強い状態ではインスリン過剰分泌も起こさないとも限りません。

6.甲状腺機能障害
甲状腺ホルモン、特にT4は小腸からブドウ糖の吸収を促進します。甲状腺機能亢進症では、食後の過血糖および反応性低血糖症が、機能低下症では、食後、ブドウ糖値が上がらない無反応性低血糖症が起こりやすいです。

7.その他
低血糖症はビタミン依存の体質とも呼ばれます。クレブス回路を始め、代謝を進ませる為には酵素が必要ですが、酵素は補酵素(特にビタミンB群、ビタミンC)、や活性化剤(鉄、亜鉛、マンガン、銅、コバルト)の助けなくしては働く事が出来ません。その中でもビタミンB群が重要な役割を果たしております。低血糖症の人は、酵素の働きの為に、補酵素として普通の人の10倍から数十倍のビタミンを必要とする体質の人が多いです。高脂血症、高尿酸血症の人は、代謝障害を有する事があり、低血糖症を起こす率が高いようです。

低血糖症の原因

低血糖症は主に食生活の不摂生によって起こる場合がほとんどです。遺伝的な体質があっても生活管理を行う事によって、多くの場合病気の発症を予防できるのです。

1.糖質の過剰摂取による膵臓機能の障害:
食物中の糖はまず最初に血液に入るので、何らかのメカニズムでコントロールされない限り、血糖値は危険に変動します。身体には、どんな時でも血糖値を適当な値に保つ、効果的なメカニズムがあります。もし血糖値が高過ぎる、あるいは急激に上昇すると、ランゲルハンス島(膵臓のインスリン産出部分)がホルモンのインスリンを産出し、それを血液に送る。インスリンはその糖を別の成分に変換して、血糖値を正常にします。もし血糖値が低すぎると、脳は脳下垂体を通じて、副腎にメッセージを送りホルモンを分泌し、甲状腺にも甲状腺ホルモンを出すようメッセージを送り、血糖値の調性を図ります。

膵臓からも血糖値を上昇させるホルモングルカゴンが分泌されます。理想的にはこれらの腺と器官が正しく機能している時、血糖値は正常に保たれます。例え、我々が時に無思慮な食事によって、身体を酷使したとしても、これらの血糖調節機構はその緊張を処理する事が可能です。しかし限界があります。他のどんなメカニズムとも同じ様に、人間の身体の中にあるあるいは人工的なメカニズムでも、壊れる可能性があります。そうなった時、低血糖症や糖尿病という様な病気が起こります。現代の食生活には、糖特に精製糖の過剰摂取により、膵臓に負担をかけていることが多い。1日にとって良い砂糖の量はその人の体重の約半分までです。(例:60kgの人は30gまで)それを超えると、膵臓の活動が過剰となり、疲労してくるため、インスリンを正常に分泌出来なくなってきます。多くの場合、インスリンが少しの血糖値の上昇に対して過剰に分泌されるようになり血糖値が異常に低くなります。(反応性低血糖症)

2.アルコール、タバコ、コーヒーあるいはカフェイン含有清涼飲料水の過剰摂取:
アルコールは分解されて、ブドウ糖となり。腸からのビタミンB6の吸収を六分の一に減らします。タバコ、コーヒーなどのカフェインは、副腎を刺激して、血糖値を上昇させます。

3.意図的な過食、特に精白炭水化物や動物性タンパク質の過剰摂取。
過食は血糖値の上昇をおこしやすい。特に、精製炭水化物は、急激に血糖値を上昇させるので、膵臓に負担を掛け易い。脂肪の過剰摂取は脂肪を消化液(リパーゼ)を分泌する膵臓を刺激し、疲れさせます。

4.ストレスも、血糖調節に関与する副腎を疲れさせ、血糖値調整に悪影響を与えます。

5.ビタミン・ミネラルの摂取不足
食物の単位gあたりのビタミン、ミネラルの含有量の低下、及び代謝に必要なビタミン、ミネラルの摂取量が低下している為、低血糖症を起こし易くなっています。特に糖質の過剰摂取はvit.Bを消費し、冷凍食品やレトルト食品の多用もビタミン、ミネラルの摂取不足を招いています。

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